批判を受けたビットコイン売却の真相と市場の過剰反応
マイクロストラテジー(Strategy Inc.)が2022年以来初となるビットコイン売却を実行し、市場から大きな批判を浴びた。2024年5月26日から5月31日の期間に32枚のビットコインを約250万ドルで売却したこの取引は、同社の総保有量のわずか0.004%に過ぎないにもかかわらず、予想外の大きな反応を引き起こした。CEO フォン・レ氏は、このビットコイン売却が経営哲学の変更ではなく、市場に対する「予防接種(inoculation)」であると述べた。つまり、あらかじめ売却が可能であることを示すことで、今後の市場の混乱を防ぎたいという意図だったのだ。
経営上の柔軟性を証明するための計画的な取引
レ氏は売却の理由を3つに分類した。第一に、必要時にビットコインを売却できる体制を整備していることを確認すること。第二に、売却システムが正常に機能することを検証すること。第三に、過去に低い価格で購入したビットコインの含み損を活用した税務最適化を実現することだ。同社は過去に1万ドルから12万5000ドルまで、様々な価格帯でビットコインを取得しており、このタイミングでの売却は単なる資金調達ではなく賢明な資産管理戦略であった。注目すべきは、売却が経営危機による強制的な措置ではないという点だ。レ氏は「配当金を支払うために売却する必要はなかった。他の資金調達手段がある」と明言し、売却収益は優先株式の配当に充当されたことを公開した。
売却と同じ時期を見ると、同社は約1500枚のビットコインを購入していた。つまり、32枚の売却に対して1500枚の買い増しを行うという、純粋な買い越し姿勢を継続していたのだ。この事実は、マイクロストラテジーが本質的にはビットコイン保有を続ける強気な立場を変えていないことを示している。
「絶対にビットコインを売らない」というドグマからの実用主義への転換
マイクロストラテジーの創業者マイケル・セイラー氏が掲げた「決してビットコインを売らない」という名高いスローガンが、実務的な運用の前に柔軟に解釈される時代が到来したのだ。レ氏は「普通株の株主にとって売却が理にかなっているなら、我々はビットコインを売却する」と断定し、理想主義的な永遠保有戦略よりも、複数のステークホルダーの利益を守ることを優先する姿勢を示した。
興味深いことに、レ氏は批判の主源が小売投資家と「暗号通貨アナーキスト」と呼ぶ層であり、機関投資家からは特段の懸念を受けていないと指摘した。実際に同社が対話する機関投資家たちは、このような売却決定によって動揺していないとのことだ。この発言は、市場内での利益相反が存在すること、そして企業の意思決定がより大きな機関投資家の利益に最適化されていることを示唆している。
過去に同社は2022年12月に704枚のビットコインを売却し、わずか2日後に810枚を買い戻すという税務損失の刈り取り(タックスロスハーベスティング)を実施した実績がある。仮想通貨市場にはまだ株式市場の「ウォッシュセール規則」が適用されていないため、この裁定取引が成立した。つまり、マイクロストラテジーは既に売却・買戻しサイクルの実績があり、今回の取引は決して前代未聞の出来事ではなかったのだ。
ビットコイン価格は1枚あたり平均7万7135ドルで売却されたが、同社のレ氏は長期的なビットコイン投資論については強気な姿勢を保っている。インフレーションへのヘッジ、大型政府への対抗手段としてビットコインを位置づけ、現在の市場環境は2022年5月の75%下落に類似した一時的な調整局面に過ぎないと見解を述べた。マクロ環境では連邦準備制度理事会の金利政策の不確実性、複数の国際紛争、仮想通貨規制の不透明性が存在するが、これらも長期的な買い姿勢を変えるほどの要因ではないと考えられている。
