ウォール街の機関投資家がビットコインを理解していない現実
モルガン・スタンレーのデジタル資産戦略責任者であるエイミー・オルデンバーグは、ビットコインの主流化を阻む最大の障害は商品の不足ではなく、投資家とアドバイザーの教育不足にあると指摘している。同行が2026年1月に新設したこのポストに就任したオルデンバーグは、26年間にわたるキャリアで新興市場や銀行インフラが不安定な地域での取引経験を積んできた。その経験から、彼女はビットコインの本質的な価値をいち早く理解していた。
モルガン・スタンレーは約9.3兆ドルのクライアント資産を運用しており、2025年10月には投資委員会がポートフォリオの2~4%を仮想通貨に配分することを正式に推奨している。推奨文書ではビットコインを「デジタルゴールド」に相当する希少資産として位置付けているにもかかわらず、実際の顧問による採用は遅々として進まない状況が続いている。
金融アドバイザーがビットコインと他の暗号資産を区別できていない
オルデンバーグが教育格差として指摘する問題は極めて深刻だ。多くの金融顧問はビットコインとその他の暗号資産の違いを明確に説明できず、ましてやビットコイン、イーサリアム、ソラナといった個別資産の構造的な相違を顧客に説明する能力を欠いている。顧客が「これは私の退職金口座に適切か」という単純な質問をしても、多くのアドバイザーは確たる答えを提供できない状態にある。
この教育格差は両方向に作用している。一方では、仮想通貨取引所の破綻を目撃して成人した顧客層が、すべてのデジタル資産をFTXの混乱と同一視する傾向がある。他方では、受託責任を負う金融アドバイザーがリスク回避的になり、まだ十分に理解していない資産の推奨を躊躇している。この悪循環が機関投資家レベルでのビットコイン普及を妨げているのだ。
モルガン・スタンレーのビットコインETF戦略が示す成功と課題
2026年4月7日に上場したモルガン・スタンレー・ビットコイン・トラスト(MSBT)は、米国チャーター銀行による初の現物ビットコインETFとなった。初日の取引高は3380万ドルを超え、ブルームバーグのシニアETFアナリストエリック・バルチューナスによると、全ETFデビューの上位1%に位置する成績を記録している。
さらに注目すべきは、同ファンドの経費率が0.14%であり、米国市場で最も安いビットコインETFとなった点だ。ブラックロック社のIBIT(経費率0.25%)と比較しても11ベーシスポイント安い競争力を持っている。しかし製品の優位性だけでは市場浸透は不十分であることが判明した。モルガン・スタンレーのアドバイザー陣による実際の利用率が期待値に達していないため、同行はむしろ顧問教育プログラムの拡充に重点を置く戦略転換を迫られている。
規制環境の克服と技術パートナーの調整も重要な背景要因だ。モルガン・スタンレーは連邦準度に管理される銀行持株会社傘下にあるため、独立資産運用会社であるブラックロックより厳しい資本規制と規制制約に直面していた。同行は数年前にE-Tradeプラットフォームで現物暗号資産取引を提供する計画を立てていたが、FTXの破綻を含む業界再編により提携候補ベンダーの多くが消滅したため、戦略を一から再構築する必要に迫られたのだ。
