SpaceXが隠していた10億ドルを超えるビットコイン資産
2026年6月、イーロン・マスク率いるSpaceXがナスダックに上場した際、市場を驚かせた発表がある。同社は約1.29億ドル(約130億円)相当の18,712ビットコインを保有していたのだ。この数字が公開されるまで、オンチェーン分析家らは同社が約8,300ビットコインを保有していると推定していた。つまり、世界で最も注視されるプライベート企業の一つが、推定の2倍以上のビットコインを秘密裏に保有していたということになる。同社はこれらを約6.61億ドルで取得しており、上場時点で既に80%近い含み益を抱えていた。
ビットコイン企業ではなく、余剰資金の戦略的保有という位置付け
SpaceXのビットコイン保有で注目すべき点は、その位置付けの独特性にある。MicroStrategyなどの既存のビットコイン関連企業は、ビットコイン取得そのものがビジネスモデルの中核だ。しかしSpaceXは異なる。ロケット、衛星、AI技術を主軸とする企業として、単に余剰資金をビットコインで保有することを選択したに過ぎない。時価総額1.8兆ドルという巨大企業において、130億円のビットコイン保有は全体の0.07%程度に過ぎない。つまり、企業の経営方針や業績に大きな影響を与えないサイズでありながら、同時に「大企業もビットコインを資産として認める」というシグナルを市場に発信しているのだ。
四半期決算での時価評価と企業の対応姿勢が今後の鍵を握る
上場企業となったSpaceXには、公開企業会計ルールが適用される。これは「時価評価会計」を意味する。毎四半期ごと、ビットコイン保有額は現在価格で評価され直し、含み益や含み損は直接決算に影響する。テスラがこの仕組みの教科書的事例となっている。ビットコイン相場が下落した期間、テスラの決算書には数億ドルの評価損が計上された。SpaceXはビットコイン上場時から既に37%下落した相場で公開企業となっており、今後の相場変動によって四半期ごとに大きな利益変動が記録される可能性がある。重要なのは、テスラもSpaceXも両社ともこれまでビットコイン売却による取引をほとんど実施していないという点だ。つまり、相場変動というノイズを吸収しながらも、長期保有姿勢を貫く意思を示している。この姿勢が維持されるかどうかは、今後の企業決算と経営判断の中で最も注視される要素となる。もし同社がポジションを圧縮したり、開示方法を変更したりすれば、「大企業による戦略的ビットコイン保有」というナラティブは大きく損傷するだろう。
