米財務省がテロ組織の暗号資産ネットワークを一斉摘発
米国財務省の外国資産管理室(OFAC)は、テロ組織ISIS-K(イスラム国ホラサン州)に関連する134個の仮想通貨アドレスを新たに制裁対象に追加した。今回の措置で131個のTronアドレスと3個のMoneroアドレスが対象となり、これらのウォレットには2023年以降140万ドルを超える送金が行われていたことが判明している。
特に注目すべきは、Tetherがこれら131個のTronアドレスの資金をすぐさま凍結した点である。この迅速な対応は、ステーブルコイン発行企業が国際的な制裁体制の中で重要な役割を果たしていることを示唆している。従来の銀行システムでは対応に時間がかかることも多いが、ブロックチェーン上のステーブルコイン発行者は数時間以内に対応可能な構造となっているのだ。
メディア組織を通じた寄付金募集の実態
ISIS-Kはメディア部門であるアル・アザイム・メディア財団を活用し、ウェブサイトやメッセージングプラットフォームを介して暗号資産による寄付を募集していた。Chainalysisの分析によると、同組織はTron、Monero、ビットコインの複数のネットワークを駆使して資金調達を行っていた。
この手口の特徴は、従来の国際送金よりも追跡が困難で、速度が速いという暗号資産の特性を悪用していた点である。Moneroのような匿名性に特化した仮想通貨を含める戦略は、当局による監視を回避する意図が明確である。今回の制裁により、これらのネットワークの脆弱性が露呈し、同時に暗号資産業界における規制枠組みの重要性が再認識されることになった。
ラテンアメリカの犯罪ネットワーク摘発と暗号資産マネーロンダリングの拡大
同時にOFACは、ブラジルを拠点とする犯罪組織「プリメイロ・コマンド・ダ・カピタル(PCC)」に関連するネットワークも制裁対象に指定した。PCC はラテンアメリカ最大級の犯罪組織とされており、このネットワークは3000万ドルを超える違法資金を洗浄し、暗号資産を使用してブラジルへ送金していた。
この事例は、テロ組織だけでなく一般的な犯罪組織もマネーロンダリングの手段として暗号資産を活用している実態を示している。米国が生成した違法収益を国外に移動させる際に、ブロックチェーンの匿名性と速度が重宝されているのだ。こうした状況を踏まえて、世界の金融規制当局は暗号資産交換所や発行企業に対するAML(マネーロンダリング対策)強化を急速に進めている。
Tetherは過去の実績として、2026年1月に5つのTronウォレット上の1億8200万ドル以上のUSDTを制裁遵守方針に基づいて凍結している。このように大型ステーブルコイン発行企業が制裁機関との連携を強化することで、不正資金の流通阻止が実現されていく構図が形成されつつある。
